Japanese Culture

サムライの魂を引き継ぐドミニカ剣士たち | 剣道

剣道がドミニカに伝わったのは今から約60年前の1956年から1959年のことである。日本政府の「移民政策」によって移住した日系人らによって広められた。 移住者の中に軍隊や警察で剣道を経験した者がいたが剣道を極めた者はいなく、当初はまったく剣道の形をなしてなかったという。道場もなかったため、公民館などを借りて日本人同士で稽古をしたとのことであり、まさに師範も道場もないゼロからのスタートであった。

移住者である故・笠原清次氏(1923-2007)は、剣道の普及に努めた一人として知られる。彼の死後も彼が育て上げた弟子たちはドミニカ剣道界の第一線で活躍する。また、陸海空軍および警察に対し柔道を指導し、ドミニカに柔道を確立するなど人々からの尊敬を集めた故・松永護氏(1936-2016)は、道場や防具を提供するなど剣道界においても大きく貢献した。

現在、ドミニカでの剣道の経験者は200人以上を数えるに至っているのだが、これらはすべて彼ら日系人の尽力の賜物であろう。笠原氏の弟子であったドミニカ人が中心となり、年に一度笠原杯という剣道大会が開催されているのもうなずける。2012年には外務省の「草の根文化無償資金協力」のもと、サントドミンゴ自治大学(UASD)に 無垢床材を使用した剣道場が完成した。中南米地域にはこれだけ本格的なものはないという。道場では学生向けに剣道の授業が開講されている。

ドミニカ共和国では空手、柔道の人気は剣道のそれより高い。理由としては剣道の防具の購入が困難であることが挙げられる。実際、剣道の稽古を続けている弟子たちの多くは、家計に余裕があるのも確かである。国際剣道連盟が主催する3年に1度の世界選手権大会においても、移動費の負担が重く参加選手が揃わないのが現状だ。野球を見てもわかるようにドミニカ人の身体能力は極めて高く、全てのスポーツ、武道に対して才能を秘めているが、こと剣道においては中南米地域では日本人の移民を多く受け入れ、先進国への仲間入りを果たそうかというメキシコ、ブラジル、チリ、アルゼンチンが強豪国として知られている。

剣道は、剣道具を着用し竹刀を用いて一対一で打突しあう運動競技種目とみられることもあるが、実際は稽古を続けることによって心身を鍛錬し人間形成を目指す「武道」である。勝負を争うだけでなく、礼に始まり礼に終わることも重要なのだ。「道場に対する礼」「師に対する礼」「相手に対する礼」。つまり、自分を成長させるためには、常に感謝の気持ちを持つことが大切であるということだ。剣道は勝ち負けだけのスポーツとは違う、人生で必要なことをたくさん得られる、まさに活人剣(かつにんけん)である。日本の武士道の精神に基づく剣道は、カリブ海に浮かぶこの島国でも確かに息づいている。

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